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前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い 「アルビオンか……」 空に向かって昇り始めた朝日を全身で受けながら、柊は切り立った崖の端に立っていた。 眼下に広がっているのは霧のように立ち込めた雲と、その隙間に垣間見える青色。 この崖の底は存在しない。 あるのは今彼の天上を覆っているのと同じ空であり、そこから更に数千メートル下にある海面が底と言えば底なのだろう。 浮遊大陸アルビオン。 ファンタジー世界ここに極まれりといったそれを実際眼にしそこにたっている事に、柊は少なからずの感動と興奮を覚えていた。 「凄えな――」 嘆息交じりに柊はそう呟き、 「――シルフィードは」 振り返って少し離れた場所にぶっ倒れているシルフィードを見やった。 結局あれからシルフィードは何かに取り憑かれたように空を走り続け、ついには柊達の駆る箒の後塵を拝する事なくアルビオンまで到達したのだ。 ……もっともそれは柊の方が一旦性能の差を見せ付けて溜飲を下げたので、あえて抜こうともしなかっただけなのだが。 ともかく箒との勝負に勝利を収めたシルフィードではあったが、その代償は大きかった。 一時も速度を緩める事なくアルビオンまでの距離・高度を一気に飛んできたため疲労の困憊具合が著しく、柊が遠目から見てもそれとわかるくらい激しく身体が上下している。 ひゅうひゅうと掠れた呼吸音まで聞こえる始末だ。 「スピードの向こう側にあるゼロの領域を垣間見たのね、きゅいぎゅっ……ダメ、吐きそう……」 「……馬鹿」 息も絶え絶えに小さく漏らすシルフィードに、すぐ傍に腰を下ろしていたタバサは嘆息しつつもどこか嬉しそうに言って頭を軽く撫でる。 くすぐったそうに眼を細めて主人の労りを受けるシルフィードの下に、柊がゆっくりと歩み寄ってきた。 「大丈夫か?」 「……!」 するとシルフィードは途端に牙を向き出し、威嚇するように尻尾を振り回して柊を睨みつけた。 そして彼女は小さく唸りを上げた後、柊に向かって言った。 「……あんたなんかにお姉様は渡さないのね」 「いや、取りゃしねえって……」 嘆息交じりに柊は返したが、シルフィードはそれでも収まりがつかないらしく翼を手足のようにばさばさとバタつかせて叫んだ。 「あんな棒っきれよりシルフィードの方がずっと速いんだから! お姉様の使い魔はシルフィードなのね! お姉様が乗っていいのはシルフィードだけなんだから!!」 「わかったわかった、俺が悪かったよ……!」 頭をかきながら柊がそう言うと、シルフィードは満足気にふんと鼻を鳴らして再び身体を大地に横たえた。 そんな彼女を見ながら、柊がぽつりと漏らす。 「なあシルフィード、一つだけ言っていいか?」 「きゅい?」 「……お前、喋れたのな」 「……………………あっ」 シルフィードがはっとして呻いた。 沈黙がしばし場を支配し、ややあってシルフィードは厳かに口を開いた。 「……あ、あっしはお姉様に作られたガーゴイルなのでやんす」 「なんで三下口調になるんだよっ!?」 柊が思わず突っ込んだが、次の瞬間シルフィードから視線を反らしてうっと息をのんで黙り込んだ。 それにつられてシルフィードもそちらに眼を向ける。 そこには、 「……」 恐ろしいまでの無表情でシルフィードを睨みつけるタバサがいた。 「ヒぃっ、ひぃ!? あ、お、お姉様っ、これは違うのね! やむにやまれぬ事情というか、言っておかなきゃいけないというか!! とにかくそんな感じで……!!」 「……」 「お、落ち着いてお姉様!! あっしの話を聞いて欲しいでやんすのね!!!」 「混ざってる混ざってる、三下口調が混ざってる!」 柊の突っ込みも聞こえないらしくシルフィードはガタガタと震えながらタバサに擦り寄った。 タバサはそんなシルフィードを今までにないほどの完璧な無表情で見据えた後、杖を手にゆらりと立ち上がる。 シルフィードの顔が恐怖に染まった。 ※ ※ ※ きゅおぉーーーーーーーーん…… シルフィードの悲痛な叫びを背後に受けながら柊とタバサは箒でアルビオンの上空を走っていた。 「いいのか、置いてきて……」 「構わない。回復すれば勝手に来るだろうから」 タバサはシルフィードに何もしなかった。何もせずに完全放置して柊を促し出発したのだ。 シルフィードはタバサにかなりご執心のようだったので恐らく一番キツい仕打ちだともいえよう。 主がそうするといった以上柊としてはそれ以上何も言えなかった。 ともかく、柊達はそうして哀れな風竜を置き去りにしてその場を離れ、辿り着いた現在地を知るために近隣の村なり町なりを探し始めた。 「……シルフィードが喋れること、他の人には言わないで欲しい」 眼下に広がる山野を眺めていると、タバサが柊に向かって声をかけた。 「喋る竜は珍しいのか?」 使い魔になった犬やら猫やらは人語を解し一部は喋れるようになるらしいという事は柊も知っている。 アルビオンに行くまでと違いさほど速度を必要としないため、今は柊の後ろに同乗しているタバサは小さく頷いてから言葉を続ける。 「絶滅した、とされているくらいに珍しい。だから、知られれば面倒な事になる」 「なるほどな。わかったよ」 「ありがとう」 ぽつりと呟いた彼女に軽く頷いて答えると、柊は改めて周囲を見渡した。 この場所はアルビオンの完全に端であり、流石に空に浮かぶ断崖絶壁の周辺で生活を営む村落などはないようで見渡す限り緑ばかりだ。 内陸に入ってしまった後で岸壁沿いに行けば港に辿り着いただろうことに気付き、柊は小さく舌打ちした。 「引き返すか……」 箒なら引き返して改めて岸壁沿いに向かうのもそう手間ではない。 するとタバサが背中を軽く叩いて遠目に見える大きな山を指差した。 「あの山沿いに北に向かって。そうしたらおそらく北西に向かう街道にあたる。後は道なりに進めば主街道に合流する」 「わかるのか?」 「地図でしか見たことないけど、多分合ってる。かなり南の方に着いてる……と思う」 「了解」 言って柊は機首を回して少し速度を上げると、タバサの指示通りの進路へと向かう。 やがて彼女の言った通りの街道を遠くに見つけると、なるべくそちらに寄らないようにして道に沿うように箒を走らせる。 人がさほどいない山野ならばともかく街道ではそれなりに人が通るため、自分達の立場を考えるとあまり人目につかない方がいい。 まして飛んでいるのが竜などといった騎獣ではなく箒ならなおさらだ。 更にもう少し進んで今までのそれより更に広い主街道が確認できる場所まで行くと、柊は一旦箒を止めて上空で浮遊したままタバサを振り返った。 声をかけるまでもなく柊の意図を察したタバサが遠目の主街道をなぞるように指を動かす。 「西に行くと工廠の港町ロサイス。北に行けばシティ・オブ・サウスゴータ。そこから北東に首都のロンディニウムがあって、ニューカッスルはその更に北」 「てことはこのまま真っ直ぐ北に行けばニューカッスルには行けるか……?」 アンリエッタから依頼を受けた際に、王党派は現在ニューカッスルに追い詰められているという情報を得ている。 だが、この世界の情報伝達とその誤差がどの程度あるのか定かではない。 戦地を移しているのかもしれないし――あるいは既に敗北し戦争が終結してしまっている可能性もゼロではないだろう。 ならばまずやるべきは現地での情報収集だ。 「……そのシティ・オブ・サウスゴータ辺りか?」 戦地直近のニューカッスルと王都だけに現状ではレコン・キスタの本拠地となっているだろうロンディニウムは色々調べ回るにはかなり危険度が高い。 適度に離れているシティ・オブ・サウスゴータならばいくらか動きやすいはずだ。 柊が尋ねるとタバサはさほど間をおくでもなく「妥当」と頷いた。 やはり彼女はルイズやキュルケと毛色が違って『現場』向きであるらしく、柊としても非常にやりやすい。 二人を乗せた箒は光の尾を引いてアルビオンの空を北に駆けていった。 ※ ※ ※ 「もうだめだっ!!」 陽が中天を過ぎた頃、サウスゴータの中央広場にある噴水を臨むベンチに座り込んで柊は頭を抱えた。 数時間前にこの街に辿り着いた二人は、街の手前で箒から降りると別々の入り口から街へ入り手分けして情報収集をすることにしたのである。 そして柊が得た情報は要約すると二つ。 戦況はレコン・キスタ――国内では貴族派と呼ばれている――が圧倒的に優勢なこと。 王党派はニューカッスルに追い詰められていること。 ……つまり、学院でアンリエッタから得た情報以外は何もわからなかった。 「やっぱシティアドベンチャーにはシーフ職なりエクスプローラー職が必須だったか………」 などと意味不明な事をぶつぶつ呟きながら地面を見つめていると、ふとそこに影が差した。 見上げればそこにタバサが立っていた。 眠たいのか呆れているのか半眼で見つめてくる彼女に、柊はおずおずと尋ねる。 「ど、どうだった?」 「……それなりに」 タバサが言うと柊は歓喜の表情を浮かべて立ち上がり彼女の諸手を取ってぶんぶんと振り回した。 「よくやった! 助かった、ありがとう! お前がいてくれてよかった、マジで!」 「……」 今度こそ呆れた表情を浮かべたタバサは小さく嘆息すると、彼の隣に腰を下ろして得てきた情報を話し始めた。 話が進むにつれようやく柊も本来の表情を取り戻し、彼女が報告を終えると少しの間沈黙してから呟いた。 「……それはおかしいな」 「おかしい」 柊の呟きにタバサも首肯する。 仕入れた情報によると王党派は一週間ほど前にニューカッスルの外れ、大陸の端にある城にまで追い詰められたという事だ。 一週間も持ちこたえているのだから存外に王党派が食い下がっている――と言いたいところなのだが。 情報を仕入れていくほどに明らかにこの状況はおかしい事がわかったのだ。 追い詰められた王党派の戦力は現在恐らく五百は上回らないだろうという話だ。 一方追い詰めている側のレコン・キスタ――貴族派は反乱を起こして以来国の内外から無節操に戦力を取り入れ、今では三万とも四万とも言われている。 ……もはや趨勢を語るのが馬鹿々々しいほどの戦力差だ。 極端な話突撃命令を下しさえすれば、後は指揮官が寝ていても勝利が転がってくるレベルの話である。 にも関わらず依然として王党派は今だ残存しており戦況が膠着している。 「万単位の軍隊なんて維持するだけでも馬鹿にならねえってのにな……」 タバサが話を聞いた傭兵達などは何もしないで食い扶持が稼げると深く考えもせずに喜んでいたそうだが、生憎彼女と柊にとっては喜べる状況ではない。 「……つまり、そんな馬鹿にならない事をやってでも王党派を残しておく意味がある、ということ」 彼女の言葉を否定する材料がないため柊は嘆息を返す他になかった。 自分達が今ここにいる理由を鑑みればその意味は簡単に行き当たってしまうからだ。 このアルビオンでの勝利はもはや覆ることはない。ゆえに彼等の視線はその先――対トリステインを見据えているのだろう。 ゲルマニアとの同盟を阻止するために必要とされる、アンリエッタの手紙。 ものがものだけに王党派を攻め落としてその残骸から探し出すのは極めて不確かで効率が悪い。 よってあえて攻めることをせず、潜入なり何なりをやってどうにか入手しようと策を練っているといった所だろうか。 「そうなるとこっちとしても急がないといけねえんだけど……」 こちらには入手そのものに関してはアドバンテージがあるとはいえ、向こうは既に状況を構築して約一週間が経過している。 できる限り急いで王党派に接触するべきなのだろうが、柊が調べた限り彼等の尻尾すら見出すことができなかった。 期待交じりにタバサをちらりと見たが、やはりというべきか彼女も首を左右に振った。 「……陣中突破しかねえか」 ある意味依頼を受けた時点でほぼ唯一の方法ではあるのだが、正直情報を仕入れた今では更に気が進まない手法だ。 箒の機動性があれば戦陣を抜くことも追っ手を振り切ることもさほど難しい事ではない。 問題はそれによって自分達――外部の者が王党派に接触したことがレコン・キスタに知れてしまうという点である。 この状況でそんな事態が起こればその接触の意味は悟るに十分だろうし、そうなると下手をすれば敵の攻勢を招く恐れすらあるのだ。 「夜になって?」 「いや、飛ぶ時の魔力光は隠せねえから逆にバレる。もうちょっと経って夕陽に紛れて行くのが一番いいだろ。まあ遅かれ早かれってレベルだけどな……」 嘆息交じりに言って柊はベンチから立ち上がり噴水で軽く手を洗った後、タバサを振り返った。 見やれば彼女はベンチに座ったまま、僅かに表情を硬くしてじっと柊を見やっている。 ――いや、正確には柊を見ているのではない。 柊の後ろにある噴水、その更に向こうにある露天の雑踏を見据えていた。 「どうした?」 「……」 柊が尋ねるとタバサは音もなく立ち上がり、その露天通りの方へと歩き出した。 付いて来い、とでも言う風に袖を引かれて柊も彼女の後に続く。 この大陸で起きている戦争ももはや終結に近いというだけに街の露天はさほど重たい空気はなく多くの街人達が賑わっていた。 中には傭兵然とした者達やフードを被り素性を隠している者も少なくない。 どうやらタバサはそんな素性の知れない何者かの後を追っているようだった。 尾行を始めて間もなくタバサが追っている相手がほぼ特定できた。 フードを目深に被って顔を隠し、ローブを着込んでいる人間。 その動きや所作からして、おそらく女。 先を行く彼女は向こうから歩いてきたガタイのいい傭兵と肩がぶつかり、僅かによろめく。 ぶつかった事にも気付かずに歩いていくその傭兵に、彼女は振り返りざまに睨みつけて小さく舌打ちした。 「……!」 その時に僅かに覗いた女の顔を垣間見て、柊はタバサが彼女を追っていた理由を理解した。 その女は眼鏡をかけていた。振り返るときにちらりと、翡翠色の髪が覗いた。 改めてみれば、確かにその動作には見覚えがある。 と、女は不意に脇道にそれて路地裏の方に入っていった。 「バレた」 「だな」 言って二人は頷きあい、歩を速めて路地裏へと足を踏み入れた。 路地裏の常というべきか、表の喧騒が別世界のように静まり返ったその道の奥。 待ち受けるように女がそこに立っていた。 彼女はかけていた眼鏡を外すと、猛禽のような鋭い視線を柊達に向け―― 「あ?」 少し間の抜けた声を出した。 次いで彼女は見るからに動揺を露にし、信じられないものを見るような表情で口をぱくぱくさせた。 「な、なんでお前がここに……!」 「それはこっちの台詞だ。なんであんたがここにいるんだよ、ロングビル先生……いや、フーケって言った方がいいのか?」 深く息を吐きながら言った柊に、彼女――フーケは忌々しそうに顔を歪めた。 ※ ※ ※ 前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い
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「難あり、か」 トリステイン王宮の一室、報告書に目を通したウェールズ・テューダーが、ため息と共に呟いた。 報告書を持参した初老の男性は、アルビオンの紋章の入ったマントを着けており、年の頃は五十ぐらい、黒に近い緑色の髪の毛には白髪が多く交じっている。 眉間の深い皺は、彼の顔を見た多くの人に”不機嫌だ”という印象を与えるが、別に不機嫌なわけではない。 「陛下、志願兵の練度にご満足頂けぬのでしたら、今すぐにでも訓練内容を見直し…」 「エリック。僕が気にしているのは戦力としての練度ではないよ、規律のことだ。アルビオンの貴族がトリステインの首都で問題を起こしたとあれば、いい笑いものだ。それに陛下はやめてくれ、僕は正式に戴冠式をしていないのだから」 エリックと呼ばれた初老の男性は、うっ、と息を飲み込み黙ってしまった。 執務に使っているテーブルを挟み、ウェールズとエリックの間で鋭い視線の応酬が行われた、時間にしてほんの一瞬、一秒程度のことであったが、緊張感に満ちた時間でもあった。 「我ら王党派は、トリステインにとっては厄介者だった。幸運なことにタルブ戦で我々は勝利し、厄介者であるという印象を覆すことができた…しかしそれは奇跡に等しい」 「………」 「始祖のお導きだとか、正義の鉄槌などと呼んで、王党派の勝利を己の喜びとするのは心情としては当然だろう。しかし勝利に酔いしれ、喜びが傲慢に変わっては意味がない」 「仰るとおりです」 ウェールズは背もたれに体重を預け、背中を軽く伸ばそうとした。 ぎぃ、と音を立てて、樹齢500年の木から切り出された焦げ茶色の骨組みが軋んだ。 「パリーは、言いにくそうに…そうだ、とても言いづらそうにしていたな。かつてアルビオンは大火に見舞われ、首都ロンディニウムは壊滅的な被害を被った。たが、それを期に火災を防ぐため石造りの家屋にするべしと、王が勅命を下したのだ。この話は知っているな?」 「はい」 「建築に使われるはずだった木材は、そのまま軍艦へと転用された、おかげでアルビオンはハルケギニア最強の艦隊を保有するに至った……が、ここからが問題だ」 ウェールズは椅子を下げて、ゆっくりと立ち上がると、壁に掛けられたハルケギニアの鳥瞰図に目をやった。 「パリーはな、本当に言いにくそうに…しかしはっきりと僕に言ったよ「アルビオンは豊穣な大地を見下すようになってしまいました」とね」 「………」 エリックは無言のまま、ウェールズの横顔を見た。 タルブ戦以後、厄介者から英雄へと180度その立場を変えられてしまったウェールズは、将来の利権をむさぼるために貸しを作ろうとする貴族の相手に疲れていた。 成り上がりのゲルマニア、無能王のガリアはともかく、トリステインは水の精霊と古くから名薬を買わしており、始祖ブリミルより続く貴族の本流を自負していたが、それがアルビオンには気に入らない。 アルビオンには、始祖ブリミルがハルケギニアで最初に興したとされる都市、サウスゴータがある。 結局のところアルビオンとトリステインは似たもの同士で、しかも同族嫌悪じみた争いを続けていたのだ。 どうにかしてその愚かしい歴史に終止符を打たねばならない……そのために尽力し、執務に励むウェールズの頬は、ほんの少しこけている気がした。 「アルビオンから亡命した貴族の中に、この期に及んでまだトリステインを見下す者がいる。その驕りを作ったのは皮肉にも祖国の歴史だ。私はその責任を取らなければならない」 「殿下のお考えには感服致しました。現在、トリスタニアの練兵場を借りて訓練を行っていますが、練兵場の手入れに力を入れさせます。トリステインの兵士達が驚くほど、練兵場を清掃させましょう」 「清掃?その作業に志願兵が納得するのか?」 「最初は不満も多いでしょう、しかし愛着を持たせるにはうってつけです。私はガーゴイルの研究のためガリアに留学しておりました。工房では初心の者がまず清掃に力を入れます。 それによって愛着を育て、工房での仕事に自負を与えるのです。職人を育てるための知恵ですが、軍にも役立ちましょう」 「…わかった。しかしそれを見て、トリステインの将軍達は何と言う?」 「トリステインもアルビオンと変わりませぬ、空の上では貴族か否かで階級が分かれるのではありません、トリステインも平民の先輩が貴族の後輩に鉄拳で序列を教え込んでいるそうです。 地上にも少なからずその風習はあるはずです。互いに清掃を心がけさせて、トリステインとアルビオン、どちらの統率が上なのかを競わせましょう」 「なるほど…よし、タルブ戦で捕虜にした者達の中には、レキシントンを指揮していたポーウッドがいたはずだ。彼を使おう」 「ミスタ・ポーウッドを彼を?よろしいのですか」 「彼はきわめて真面目だ。おかげで上官に命じられるまま叛徒となったが…まあ、相談を持ちかけるぐらいはいいさ。自由に使ってくれ」 「畏まりました。…それと今週末から、トリステイン魔法学院の貴族子弟にも訓練が課せられるそうです、戦争を知らぬ彼らにとって、捕虜はすなわち敵兵です。 トリステイン側は有能ならば捕虜でも軍に抜擢するそうですが…正直なところ、混乱を招くでしょうな」 エリックの話を聞いたウェールズは、うぅむと小さくうなった。 「確かに…。予防策はあるか?」 「こればかりは、トリステインの貴族師弟が物わかりの良い者達であって欲しいとしか言いようがありません。ミスタ・ポーウッドが歴戦の船乗りであると聞き及んでおりますが、彼の技術や経験をトリステイン側に認めさせることができれば… 欲を言えばトリステインのエリートに認めさせることが出来れば、その腰巾着からポーウッドの噂は広まりましょう」 「……わかった。すべて任せる。報告は怠らぬように。……それと、腰巾着などと人前で言うなよ」 エリックは自分の口の悪さを知っていた、またそれがなかなか直らぬ事もよく理解していた。 だが他人から指摘される機会にはあまり恵まれなかったのか、恥ずかしそうに顔を俯かせて「あ、いや…申し訳ありません」と小声で呟くのみであった。 こほん、と咳払いをして、ピンと背筋をただし、敬礼をした、そして踵を返しウェールズの執務室を出て行った。 彼はアルビオンの北方に大きな領地を持つ大貴族であったが、六男という微妙な位置のせいか、権力や富への欲が少なく、また軍務も好きではなかった。 風系統の魔法に優れており、軍人として出世するべきだと家族からも言われていたが……皮肉なことにエリックの趣味はガーゴイル技術へと傾いていた。 エリックはガリアが誇るガーゴイルの技術と運用を学ぶために、ガリアの魔法学院に留学し、腕の良いメイジの元へ弟子入りしていた。 そもそも彼がガーゴイルに惹かれたのは、食料の生産高を交渉に用いた、古い貴族の話を家庭教師から聞いたときだった。 アルビオンの食糧自給率は低い、食料の輸出入が規制されれば、一年と持たずに飢餓を迎える可能性すらある。 また、土系統のメイジも食糧事情の改善より、軍用の大砲を手がけた方が良いとされていた。 そんな体制に危機感を覚えたエリックは、どの系統のメイジが精神力を注ぎ込んでも、その能力を発揮してくれるガーゴイルに注目し、食糧事情の改善に利用できないかと考え始めたのだ。 ガリアでの学問は有意義だった、いや、むしろガリアに骨を埋める気すらあった。 だが自身の老いを感じたとき…ふと、自分がガーゴイルを学び始めたときのことを思い出したのだ。 そんな中、アルビオンがレコン・キスタの手に落ち、故郷の家族が皆戦死したという風の噂を耳にし……彼は悩んだ。 タルブ戦の時、居ても立っても居られなくなった彼は、飛び入りの義勇兵としてトリステインに味方すべくタルブ村へ向かい、そこでウェールズとアンリエッタのヘクサゴン・スペルを目の当たりにしたのだ。 それ以来、彼はアルビオン王党派の政権に加わりウェールズを補佐している。 エリックは、トリステインの宮殿から出て練兵場に向かった。 空を見上げると、遠くの空に巨大な雲が見える、おそらくアルビオンから流れ落ちる大量の水が、雲を形作っているのだろう。 「ガリアに骨を埋める気で居たのに、今になって、ここまで故郷に執着するとは……。私は結局アルビオンの人間なのだな」 自嘲気味に笑うと、彼は悠然と石畳の上を歩き出した。 舞台は移り、ハヴィランド宮殿。 古くは王と大臣が集まり、アルビオンという国の舵取りを行う場所であった。 アルビオンの首都ロンディニウムから見て南側に位置する、荘厳で巨大な宮殿は、形こそそのままであったが、回廊の両脇に掲げられた旗は今や神聖アルビオン共和国のものであった。 白一色に塗られた十六本の柱と壁面が、外から入り込む太陽の明かりを柔らかく反射させ、宮殿内を明るく保っている。 壁面や床はまるで鏡のように磨かれているが、反射する光はどれも眩しすぎず、暗くない、綿密な計算の元に作られた、アルビオンの誇る荘厳な空間であった。 ホールの中心には巨大な岩盤で作られた円卓がしつらえられており、それを囲むようにして神聖アルビオン共和国の閣僚、将軍たちが集まっていた。 彼らは、反乱によって…いや、”革命戦争”によって王政府から国を取り上げ、皇帝を祭り上げた。 かつては地方の一司教にすぎなかった男、ここに居る誰よりも、扉の前に控えた衛士よりも身分の低かった男の登場を、彼らは今か今かと待ちわびていた。 重厚なホールの扉が、二人の衛士によって音もなく開けられた、床に敷かれた緋毛氈を踏みしめるファサ、ファサというわずかな音がホールを支配する。 「神聖アルビオン共和国政府貴族議会議長、サー、オリヴァー…」 ホールに入ってきたのは、アルビオンの皇帝を名乗るクロムウェルであった、彼は掌を見せて、名前を呼ぶのを遮った。 「サ、サー?」 「無駄な慣習ははぶこうではないか。なに、ここに集まった諸君で、余のことを知らぬものはいないはずだろう」 クロムウェルの背後には、秘書のシェフィールドと、幾人かの旧アルビオン魔法衛士隊の面々が立ち並ぶ。 クロムウェルは上座へと座り、その背後にはシェフィールドが影のように寄り添った。 顔色の青白い幾人かの魔法衛士隊は、杖を胸の前に捧げるとホールから退場していく。 議長を兼ねる初代皇帝が席につく、歴戦の将軍と名高いホーキンス将軍が挙手をした、整えられた白髪と白髭、眉間に刻まれた深い皺が彼の厳しさを物語っている。 かつて司教だった男、クロムウェル皇帝に向かい、ホーキンスはきつい目を向けた。 クロムウェルが「うむ」と呟くと、ホーキンスは立ち上がって口を開いた。 「閣下にお尋ねしたい」 「なんなりと質問したまえ」 こうして、神聖アルビオン共和国の独裁的な会議が、始まりを告げた。 「厳重ね……近づけそうにないわ」 『だろうなあ』 ハヴィランド宮殿から約400メイル離れた、二階建ての空き家に、喋る剣を携えた女が隠れていた。 「デルフ、偵察するのにいい案は無い?できれば変装するなりして乗り込みたいんだけど…」 『ディティクトマジックを使われたら厄介だぜ、一発でメイジだとバレちまう』 「そうよねえ」 デルフという呼び名から分かるとおり、剣の正体はデルフリンガー、女の正体はルイズであった。 しかし髪の毛は短く、乱雑に切られており、しっとりとして艶やかだった髪の毛は、膠混じりの強力な染料で紺色に染められている。 身長は手足に埋め込んだ骨により170cmほどまで延長され、体も華奢な少女とはとても思えぬ程筋張っており、色も浅黒く、一目では決してルイズとは分からない。 肌の色が浅黒くなっているのは、体内に埋め込んだ吸血馬の骨が原因であった、両手足と腰に埋め込んだ骨は、ルイズの体内で黒銀の毛を伸ばし、筋肉の強度を劇的に引き上げた。 何度かその感覚を確かめているうちに、毛を肌の表面近くに浮き上がらせることで、肌の色を変えられることに気がついたのだ。 今やルイズは、フェイス・チェンジを使いこなすスクエアのメイジよりも、変装が上手いだろうと自負していた。 ふたりは今、クロムウェルをはじめとする神聖アルビオン共和国の重鎮が集まるハヴィランド宮殿を眺めていた。 略奪が行われたのであろう、この空き家は、家具はそこらじゅうに散乱し食品類は一切残されていない、貴金属類も無ければ血痕も無かった。 おそらく疎開した後で、レコン・キスタによって略奪され荒らされたのであろう。 壁にはヒビも入っており、物置とおぼしき部屋は無惨にも崩れていた。 そんな、いつ崩れるかもしれない空き家の突き上げ窓をほんの少し開けて、ルイズとデルフリンガーは遠くに見えるハヴィランド宮殿を見つめていた。 「デルフ、読唇術ってできる?」 『…唇の動きまで読むのは酷だなあ』 「いいわ。クロムウェルは諦めましょう。戦力が分からない以上むやみに突撃も出来ないしね」 『諦めるのか?』 「そうよ?…何か言いたそうね、疑問があるなら言っていいわよ」 ルイズは背負っていたデルフリンガーを手に持ち、柄を眼前に持ってくると、肩をすくめた。 『いや、おめえ魔法を使わずに洗脳みたいなのやってたろ?髪の毛を頭に埋め込む奴、あれはやらねえのかなと思ってさ』 「……たぶん、無理よ。あれはそこまで強く洗脳できる訳じゃないの、ほんのちょっと私の言うことに逆らえなくなるだけよ。アンドバリの指輪がそれを上回る効果を持っていたら徒労に終わるどころか、私の正体を探られてしまうわ。 それに……」 『わかった、まあ無理すんな』 「ありがと。私ね、デルフの物わかりのいいところが好きよ。……ん?」 ルイズが宮殿の近くに何かを見つけ、眉間に皺を寄せた。 目をこらしてじっと窓の外を見つめていたが、デルフにはそれがなんなのか分からない、声をかけることもできず、小さな砂時計が落ちきるほどの時間が経過した。 「デルフ、ここから離れるわよ。汚水路も使うわ、汚れるけど我慢して」 『後で洗ってくれるなら文句は言わねーけど、どうしたんだよ?』 「気づかれたかもしれないわ。宮殿前の通りからこっちを見てた!」 『この距離でか?風龍でもいたのかよ』 「違うわ、メイジよ、あたしをみて笑ったわ!久しぶりにゾッとしたわよ!」 そう言うとルイズは、空に竜騎兵がいないかを確認した、空に何者も居ないとわかると、一辺2メイルはありそうな正方形の石蓋を片手で跳ね上げ、汚物の混じる汚水路の中に飛び込んだ。 「ククッ…」 「隊長?どうしやしたか」 隊長と呼ばれた男は、馬上で唇を愉悦にゆがめた。 白髪を角刈りのように切りそろえているのと、深い顔の皺で、歳は四十ほどに見えたが、鍛え抜かれた筋肉と浅黒い肌は年齢を感じさせない。 マントを着けてはいるが、その内に着ている服は剣士のような皮当てを使い、動きやすいラフな出で立ちをしている。 腰から下げた金属製の杖は、まるで棍棒のようで、一目では彼がメイジであると分からぬほど殺伐とした気配を漂わせている。 額の真ん中から左目を通り、頬へと流れる火傷の痕も、その印象に一役買っているのだろう、先ほどから何人もの衛兵がこの男の姿を見ては、眉をひそめていた。。 。 「女か、死人のように体温の低い女だったか? ああ、それも剃刀みたいな奴だ…いい臭いがするんだろうな」 「…隊長?」 「なあ、吸血鬼と翼人を一度に焼いたことがあったな」 隊長と呼ばれた男は、楽しげに呟いた。 「は? …その件には携わっておりやせんです」 「そうか!あれはなかなかいい臭いだった、膿のようだ、汚くてどろどろとした肉が、脂と違う臭いがあって、陰湿でいい臭いだ」 「はあ…」 「今度のは違うぞ、剃刀のようだ、鉄のようだ、鋼のようだ!脂をしたためた処刑台のギロチンが焼けるようないい臭いがするぞ、きっとな!」 隊長と呼ばれた男は肉の焼ける臭いを楽しそうに語ると、はははと高笑いをした。 男は、笑みをたたえたまま、ハヴィランド宮殿へと歩いていった。 その頃、魔法学院では、シエスタが厨房の勝手口で跪いていた。 よく見るとシエスタの隣にはメイドが居て、シエスタはメイドの足に手を当てて何かをしている。 「まだ痛みは残るけど、ほとんどカサブタになっているから大丈夫。傷跡も目立たない程度には綺麗になると思うわ」 「ホント?シエスタ、ありがとう!」 「いいの。それより気をつけてね、これ以上火傷が酷かったら、私一人じゃとても治せないから」 「うん、それじゃ夕食の仕込みがあるから、またね」 「気をつけてね」 かつてシエスタの同僚だったメイドは、笑顔で手を振り、勝手口の中へと入っていった。 シエスタもその中に入りたい衝動に駆られたが…シュヴァリエを賜って以来、厨房ではシエスタは平民上がりの英雄のような扱いを受けている、それが一種の疎外感となってシエスタを戸惑わせた。 それでも、シエスタは魔法学院の厨房で働き始めた時のことを忘れられない。 子供の頃に怪我をして、片足を悪くしたシエスタは、見栄えが悪いと言われて人前には出させて貰えなかった。 しかし、同僚達はジャガイモの皮むきから鍋物の温度管理を徹底的に仕込んでくれた、それはとても厳しかったが、厳しかったからこそデザート類を任せられるまでに料理の腕を上達させることができたのだろう。 今日は、同僚だったメイドが、何かの拍子に熱い油を零してしまった、そのせいで足に掌ほどの火傷を作ってしまったが、話を聞いたシエスタが治癒のために駆けつけたのだ。 平民と貴族、その中間にあるシュヴァリエ、存外に不安定で、どっちつかずの不便な立ち位置なのだなと、シエスタは思った。 キュルケとタバサは、がらんとしてしまったアウストリの広場から、シエスタの様子を遠巻きに見ていた。 シエスタは、花壇の脇にあるベンチに二人の姿を見つけた、よく見るとキュルケが手を振って合図をしている、シエスタは小走りで二人の元に駆け寄った。 いつもなら生徒たちで賑わう休み時間なのだが、今アウストリの広場に居るのは女子生徒ばかりであった、騒ぎを起こす男子生徒も、それを遠巻きに見る男子生徒も、全くといっていいほど見かけられない。 暇をもてあました女子生徒たちは、それぞれグループで集まり、恋人や友人または家族が無事でやっているのかを噂しあっているようだった。 世論は、タルブ戦での勝利を期に、一気に戦争肯定に傾いていった。 また、虚無を騙るクロムウェルを裁くべく、アルビオンに攻め込むべしと、聖堂教会からも非公式の声が上がっている。 そんなわけで、魔法学院に勤める男の教師は、ミスタ・ギトーも含めてほとんどが出征、あるいはその準備に追われ、その数を著しく減らしていたのだった。 シエスタがキュルケの元に近づくと、キュルケはにこりと笑って呟いた。 「なあに、あのメイド怪我でもしてたの?」 「はい、火傷してしまったみたいです」 「火傷ねえ…それって男?」 「へ? ……ちちち違いますよ!もう、キュルケさんったらどうしてそんな方向に話を持って行くんですか!」 からかうようなキュルケの言葉に、シエスタが顔を真っ赤にして反論した。 それを見てキュルケがふふふと笑いだす、隣に座っていたタバサは一言「病気」と呟いたが、いつものことなので二人とも特に気にしていなかった。 「ねえシエスタ、あなたってモンモランシーと一緒に、この間の戦で治癒の功績を挙げたんでしょ?次はどうするの?」 キュルケは周囲を見渡して、両手を広げてシエスタに言った。 シエスタもキュルケと同じように周囲を見渡す、男子生徒のほとんど居ない魔法学院は、女生徒ばかりであった、男子生徒のほとんどが王軍へと志願したのである。 モンモランシーの恋人ギーシュ、そして臆病者と言われ皆から罵られたマリコルヌですら、志願したと言う。 彼らは今ごろ、トリステイン各地の錬兵場に分かれて、即席の士官教育を受けていることだろう。 そんな中、タルブ戦で功績を挙げたシエスタは、なぜか居残り組であった。 そもそもシュヴァリエを賜ったシエスタに何のアクションもないというのはおかしい、オールド・オスマンが手を回したのかもしれないが、とにかくシエスタは魔法学院で待機するようにと言いつけられているのだ。 「私は…今回、戦争には関わらないことになるみたいです。アルビオンとの戦争はいつ始まるか分からないと言われていますけど、すぐには始まらないだろうと、オールド・オスマンが仰っていました」 「でも、シュヴァリエ、持ってるんでしょ?それなら格付けの好きなトリステインが放っておかないでしょうに」 「うーん……すみません、分からないです」 シエスタは恥ずかしそうに顔を俯かせた。 タバサは二人のやりとりを聞いて、ヴァリエール家のことを思い出した。 シエスタはトリステインの公爵、ヴァリエール家からの依頼を受けている。 まだ父母が健在だった頃にも、何度か話を聞いたことのある大貴族であり、伝説的なメイジ”烈風カリン”もヴァリエール家の者だ。 だとしたら、シエスタとモンモランシーが治癒を施したという娘のために、治癒のメイジを前線に出させぬよう政治工作を行っているのではないだろうか。 そこまで考えてふと、母の姿を思い出した。 シエスタの波紋を受けてから、色あせていた母の髪の毛も、痩せこけた頬も、老人のような皺だらけの腕も、少しずつ以前の健康的な身体に近づいている。 (戦争に行って欲しくないのは…シエスタを危険な目に遭わせたくないのは、私も同じ……) いつもならトリステインとアルビオンの戦争など他人事だと切り捨てていたタバサだが、今度ばかりはシエスタのために、戦争が激化しないことを祈っていた。 「そういえば」 シエスタの呟きで、タバサの意識が現実に引き戻される。 ふと横を見ると、タバサの隣に座るキュルケの、そのまた隣にシエスタが座っていた。 「キュルケさんは、戦争で何か…あるんですか? その、確かゲルマニアとトリステインは同盟を組んでいると聞いたので」 「もう、それよそれ!聞いてよ、私だって暴れようと思ったのに、女だからって却下されたのよ!”烈風カリン”だって女なのに、なんで私は蹴られたのかしら」 「え、ええと、やっぱりキュルケさんに怪我して欲しくないんじゃ…」 額に冷や汗を浮かばせながら、熱弁するキュルケをなだめようとしたが、どうやら逆効果だったようで、キュルケはシエスタに向き直ると肩をガシッと掴んだ。 「…実家にいるとね、お見合いお見合いお見合いお見合い、私の事なんてこれっっっっっっぽっちも考えちゃ居ないわよ。いい?本当の幸せはね、お膳立てされるものじゃないの、自分で手に入れるのよ?私の二つ名は”微熱”でしょ、焦がれる愛じゃなきゃ駄目なの」 悪戯をする子供のように、しかしどここか熱っぽく語るキュルケに、シエスタは思わず腰が引けてしまった。 ちらりとタバサの方に視線を向けると、タバサは本に視線を戻しつつ「病気」と呟くだけだった。 「つまんないわねえ」 キュルケがそう呟いて、ベンチに背を預けた。 自由になったシエスタは苦笑いを浮かべたが、内心では戦争がいつ起こるのか、どんな規模になるのかと疑問だらけになっていた。 そんな時、シエスタはふと視線を感じて本塔の方を向いた。 すると本塔の正門前に立っていたモンモランシーと視線が合った、だがすぐに視線をはずして、そのままモンモランシーは本塔の前を通り過ぎ、ヴェストリの広場へと歩いていってしまった。 「…?」 どうしたんだろう、と首をかしげたシエスタに、キュルケが耳打ちする。 「あれはたぶん、何かあったわね」 「そう…かもしれません。キュルケさん、私ちょっと行ってきます」 シエスタはそう言って立ち上がり、小走りでモンモランシーの後を追っていった、さりげなく足音と気配を消しているのに気づいて、タバサはまたもや呟いた。 「職業病」 「はあ…」 モンモランシーは、ヴェストリの広場を囲む外壁の上に腰掛けて、じっ…とトリスタニアの方角を見つめていた。 「バカ」 誰に言うわけでもなく、呟く。 「バカギーシュ…」 名前を口に出すと、途端に寂しさが襲いかかってくる。 体育座りのように足を抱いて、モンモランシーは寂しそうに目を細めた。 「モンモランシーさん」 ふと、後ろかえら声が聞こえてきた、振り向いてみたが誰もいない、もしやと思って下を見ると、そこにシエスタの顔があった。 シエスタは指先とつま先を壁に当てて、そこにハシゴでもあるかのように壁を上って近づいていたのだ。 モンモランシーは視線をトリスタニアの方角に戻すと、ふぅとため息をついた。 「あの、モンモランシーさん、どうかしたんですか?」 シエスタが隣に座りつつ、そう語りかける。 顔を上げたモンモランシーがシエスタを見つめた、じっ…とたっぷり一分は見つめていただろうか、今度は顔を俯かせてため息をついた。 「何でもないの。気にしないで」 「………そう、ですか」 シエスタは自分の胸元に手を置いて、かける言葉が見つからないのか、少したじろいでいた。 理由は分からないが、一人にしておいが方が良いのではないかと思い、シエスタは上ってきた壁を降りようとしたが、それをモンモランシーが呼び止めた。 「ねえ、シエスタ」 「はい?」 「タルブ村、戦場になったわよね。あのとき…報せを聞いたとき、どんな気持ちだった?」 一呼吸置いてシエスタが答える。 「…わかりません。考える前に身体が動いてましたから。後から考えると、怖かったんだと思います。たぶん」 「怖かった?怖いのに戦場に行こうとしたの?」 「はい」 小声だが、シエスタの口調には淀みがなかった。 「あっ」 不意にモンモランシーが声を上げた、目を見開き、口を半開きにしている。 「そっか…うん、怖いから、怖いからよね。そっか……」 モンモランシーの脳裏には、タルブ戦で重傷を負った兵士達の姿が浮かんでいた。 ギーシュが同じような目に遭うのではないか、最悪の場合、死んでしまうのではないか、もう二度と会えなくなってしまうのではないかと想像しているのだ。 「ギーシュの馬鹿、トリステインを守るって、そんなこと言って、志願しちゃったのよ。何よ、何よ……私を守るナイトになるって言ってくれたのに、私を置いていくなんて酷いじゃない」 「あら、『いなくなってせいせいするわ』ぐらい言うかと思ったのに、けっこう寂しがり屋じゃない」 いつのまにか近づいていたキュルケが、ふわりとモンモランシーの足下から顔を見せた。 どうやら『フライ』の魔法でわざわざ外壁の外側からモンモランシーの顔を見に来たらしい。 「ツェルプストーまで…もう、やめてよ。私をからかいに来たの?」 「あら、からかって欲しいって顔に書いてあるわよ?」 キュルケはモンモランシーの右隣に降りると、そこに腰掛けた。 「はあ……もう、いいわよ、なんかしんみりしてるのが馬鹿らしくなって来ちゃったわ。あのお調子ものってば、臆病なくせに無理しちゃって、あたしが寂しいって思ってるのに側にいないなんてひどいと思わない?」 キュルケはモンモランシーの肩を、ぽんぽんと叩いて言った。 「ま、始祖ブリミルの降臨祭までには帰ってくるわよ。親愛なるあなたのお国の女王陛下や、偉大なるわが国の皇帝陛下は、もし戦争をしても簡単な勝ち戦になるって言ってたじゃない」 キュルケは『親愛』と『偉大』に皮肉な調子を込めていた、ゲルマニア貴族は諸侯が利害損得で寄り集まってできた国なので、キュルケにも(ある程度は)自分さえよければいいという気風はあったのだ。 「そうだと、いいんだけどね」 モンモランシーは呟いて、また、ため息をついた。 「あの、モンモランシーさん。その…私だって、見知った人が怪我をするのは嫌です。でも、怪我をしたときのために私たちがいるんですから、だから、ええと、すぐに助けに行けるようにするとか」 シエスタが口を開くが、その内容が突拍子もないものだったので、モンモランシーは顔をしかめた。 「はい? 何言ってるのよ」 「ですから、ポーションを作ったりして、治癒のためにとか理由をつけて、ギーシュさんに付き添っていけば良いんじゃないかなーって…」 「………」 ぽかーんと口を開け、呆れた顔でシエスタを見つめるモンモランシー。 しかし彼女はきゅっと口を結ぶと、両手を眼前で強く握りしめた。 「そうよ! 私ちょっと実家に言ってくる!」 ものすごい勢いで立ち上がったかと思うと、モンモランシーはフライの呪文を唱え、一目散に寮塔へと飛び去っていった。 「…あれだけ熱中できるって、ちょっと羨ましいわね」 キュルケの呟きに、シエスタはどう答えて良いか分からず、とりあえず苦笑いを浮かべてみた。 さてモンモランシーが飛び去っていった後、シエスタ、キュルケ、タバサの三人はコルベールの研究室前までやってきていた。 火の塔のとなりにあるコルベールの研究室では、タルブ村で見た『龍の羽衣』の素材を再現すべく、様々な合金のサンプルが並べられていた。 立て付けの悪い扉は、事故でもあったのか粉々になっており、蝶番に木片がかろうじて残っているのみだった。 カーテンがかけられた入り口からちらりとのぞき込むと、コルベールは精密な天秤を使い、金属類の比重を確かめているようだった。 「おお?ミス・シエスタにミス・ツェルプストー、それにミス・タバサも」 気配で察したのか、コルベールが振り向いて三人の姿を確認した。 振り向いて声をかけたコルベールの笑顔が、キュルケを少し不機嫌にさせた。 男の教師はほとんど出征したというのに、コルベールは相変わらず研究に没頭している、戦争にはまったく興味なさそうで、それがまたキュルケには気に入らない。 「お忙しそうですわね」 キュルケは、そんなコルベールにイヤミの混じった声で言ったが、それに対してコルベールは「ん?」と笑うだけだった。 「おお、そういえば……また新しい道具を思いついたんだ、明日試作品の材料がそろうから、ミス・シエスタに意見を聞きたいのだが…どうかね、二人も見てみないか?”火”は破壊ばかりではないと分かって…」 キュルケは不快感を顔に浮かべて、コルベールの言葉を遮った。 「ミスタ。あなたは王軍に志願なさいませんでしたのね」 「ん? ああ……。戦は嫌いでね」 コルベールはキュルケから顔をそむけると、恥ずかしそうに頭を掻いた。 キュルケは表情に軽蔑の色を浮かべて、ふんと鼻を鳴らした。 どの系統よりも戦いに向いた火の系統でありながら、炎蛇という大層な二つ名を持ちながらも、この教師は戦いが嫌いだというのだ。 「同じ”火”の使い手として、恥ずかしいですわ」 キュルケがそう言い放つと、コルベールは口をきゅっと結んでしばらく顔を伏せていたが、ふと顔を上げてキュルケを見た。 「火の見せ場は戦いだけではないよ、いいかね、火は……」 「聞き飽きましたわ、ミスタのお言葉は、臆病者のたわごとにしか聞こえませんわ」 キュルケはぷいっと顔をそらし、シエスタとタバサを促して歩き去っていく。 「あっ、あの…ええと、すみません」 シエスタが謝ろうとするが、コルベールは「いいんだ」と言って、早くキュルケの後を追うように促した。 コルベールは立ち去っていく三人の背を見守りながら、寂しそうに…辛そうにため息を漏らした。 「………」 「………」 「………」 シエスタはキュルケの後を追いながら、ちらりとコルベールの研究室に振り向いた。 「やめときなさい、臆病者の話を聞いたってろくな事にはならないわよ」 不機嫌さを隠そうともせずキュルケが言い放つ。 「そうでしょうか…」 「なに?」 火の系統を馬鹿にされたと思っているのか、それともただ不機嫌なだけなのか、キュルケがいつになく強い口調でシエスタに聞き返した。 しかしシエスタはそれに怯むことなく、決して大きな声ではないが、よく通る覚悟を決めた声で、こう呟いた。 「私、波紋で吸血鬼と戦うために、ミスタ・コルベール、ミスタ・ギトー、ミス・ロングビル、オールド・オスマン…… 他にも何人かの先生に協力をいただいています。 その中で、コルベール先生だけが違うんです。 ……あの先生だけです。『肺を焼け』とか、『効率が良い』とか『これなら一度に何体殲滅できる』とか。 あの先生だけなんです。効率よく殺す方法を、真剣に考えているのは」 夜。 アルビオンの首都ロンディニウムでは、いくつかの酒場に傭兵達の姿があった。 その多くは野党や人さらいで、戦争がある時だけ傭兵となり、軍の名を借りて好き勝手な騒ぎをやらかすのだ。 以前は、こうではなかった。 旧アルビオンの国王ジェームス一世は、自分と他人に厳しい、威厳が服を着て歩いているような国王であった。 その分反発も多かったが、間違いなく今よりも治安は良かったのだ。 市民達は自らの安全のために、家や店を厳重に閉じた、そして街道や路地から聞こえてくる罵声に怯え、ただひたすらに朝が来るのを待っていた。 「あら坊や、こんな所を歩いていたら、身ぐるみを剥がされるわよ」 「……はぁ」 一人の娼婦が、酒場の裏手を歩いていた細身の剣士に声をかけた。 腰に長さ80サントほどの剣を下げ、フードを被った剣士は、ハァとため息をついた。 「どう、この通りは即席の娼館街だけど、その分部屋は広いわ、ねえ助けると思って上がっておくれよ、よくしてあげるからさぁ」 剣士に声をかけた娼婦は、茶褐色の髪の毛を後ろで纏め、ポニーテールにしていた。 化粧が濃くて年齢がわかりにくいが、手の甲に浮いた皺の具合からして、25といったところだろう。 頬の骨が少し張っており、笑みを浮かべると、彫りの深い顔にくっきりとした陰影が浮かぶ。 そんな女が、一軒家の扉の前に立って、肌の透けるワンピースのような(ベビードールとか言うらしい)服を着て、剣士を招いている。 「あのね、わたしは…」 うんざりとした口調で剣士が何かを言おうとしたが、突然街道の方から聞こえてきた怒声に遮られてしまった。 「あの野郎どこに行きやがった!」 「クソガキが!おい、おまえはあっちを探せ!」 「ぶっ殺してやる!」 怒声の正体は、酒場で暴れていたごろつきであった、なぜか顔には青タンやたんこぶが出来ている、どうやら誰かにぶちのめされ、その報復に走り回っているらしい。 「げっ…」 あから様に嫌そうな顔をする剣士に、娼婦が言った。 「匿ってあげるわよ」 にこりと笑う娼婦、それを見た剣士はため息をつきつつも、素早く娼婦を抱きしめて建物中に入っていってしまった。 「きゃっ、細身なのに逞しいのね。ねえ剣士さん、私のことはアネリって呼んでね。貴方のお名前は?」 「……ロイズよ」 「え?女みたいな名前ね…あら?……もしかして、あんた、まさか、女!?」 「匿ってくれるって言ったのはそっちじゃない、ちゃんとお金は払うわよ、ああもう…何度目かしら」 ロイズと名乗った女は、娼婦をお姫様だっこの形で抱きしめたまま、何度男に間違えられたのかを思い出して……深く、ふかーくため息をついた。 ルイズが娼婦の元に匿われた頃、ロンディニウムに繋がる街道脇の森で、一人の男が何かを探していた。 『こっちだ、こっち』 男は突然聞こえてきた声に、眉をひそめたが、すぐに声の主に思い当たって安堵のため息を吐いた。 手に持った短剣状の杖に意識を傾け、短く何かを唱えると、木の上にぶら下がっていた剣が、鞘に収められた状態でゆっくりと降りてきた。 『いやあ困ったぜ、俺は目立つから駄目だとか言われちまったよ』 「まあ、おまえの形状は目立つからな。ルイズは?」 『昼間見かけた、気になる連中を調べて、今頃酒場に潜り込んでるぜ。あの嬢ちゃんが震えるなんてデルフ驚いちゃったねえ』 「…ルイズが、震える?」 『ああ、顔に火傷のある、白髪の男で、鍛えられた体格をしてる、年の頃は四十頃と言ってたぜ』 「…………そいつは、もしかして傭兵か?」 『かもしれね、嬢ちゃんはいまそれを調べてんだ』 「そうか…とりあえず、フーケと合流するぞ、すぐに移動する」 『あいよ』 「火傷の跡か…まさか、いや、まさか白炎では…だとしたら…」 ワルドの呟きは、一抹の不安を残して、闇夜へと消えていった。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
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カードライバー 天尾翔や小芹アイなど、ライブオンのプレイヤーのこと。 CardをLiveするので「CardLiver」。 老若男女さまざまなタイプがいる。 どいつもこいつも安全なカードライブではなく危険なライブバトルをやりたがる。 上級者になればなるほど変態度を増している傾向にある。 作中描写から、TCGと同じくトルクを発生させているらしいが、詳細不明。 TCGにおいては、ゲーム開始時に場に置いておかなければならない必須カードで、なければルール上ゲーム不可能。 作中ではこのカードライバーカード、もしくはそれに代わるものが存在するかどうかすら説明されていない。 どうやってカードライブを行っているのかは謎である。 タイトルロゴで「D」が強調されていること等から、名前はおそらく車の運転手という意味での「Car Driver」とのダジャレだろう。 おかげで番組開始前はレース番組と勘違いするものが多く、新聞等の番組欄でも「Car Driver」と書かれていたことが多かったとか。 タイトルからしてダジャレまみれである。 【関連】 カードライブ ライブバトル
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オーバードーズ 英語:Overdose 身体に障害や悪影響が生じる量の薬を使用すること。 別名:過剰摂取、オーバードース 略称:OD 概説 超過を意味する「over」と服用量を意味する「dose」の複合語。 オーバードーズが発生する要因としては誤った量の薬の投与(*1)や自傷行為を目的としたもの、一種のトリップ体験を引き起こす目的のものなどが挙げられる。 補足 過度なストレスや他交換を得るためにオーバードーズを行う人もおり、近年ではSNSなどでもオーバードーズを行っているアカウントの投稿が散見される。 年々オーバードーズによる死亡者が増加傾向(*2)にあったアメリカは2017年にオピオイドに関する非常事態(*3)を宣言した。
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楽曲情報 収録CD情報 楽曲情報 曲名 優勢オーバードーズ アーティスト PON ジャンル BPM 166 収録CD情報 曲名 アーティスト 収録CD 演奏時間 備考 優勢オーバードーズ PON REFLEC BEAT ORIGINAL SOUNDTRACK 1 48 優勢オーバードーズ PON jubeat sauser ORIGINAL SOUNDTRACK -Cathy & Marron- 優勢オーバードーズ PON GuitarFreaksXG2 & DrumManiaXG2 Original Soundtrack 2nd season 1 48 細部の音が異なる 優勢オーバードーズ PON GuitarFreaksXG2 & DrumManiaXG2 Original Soundtrack 2nd season 2 00 ライブ音源
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前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い 『彼』の叔父は『ミーゲ社』というドイツに本社をおく大手掃除機メーカーの開発部に勤めている。 彼は小さい頃、気のいい叔父に連れられて何度も研究所を見学し、様々な珍しいものを見てきた。 例えば発売予定の新型掃除機だったりとか告知されてすらいない企画開発中の商品だったりとかヘンテコな形のホウキだったりとか、とにかく色々なものだ。 今更にして思えばたかが掃除機なのではあるが、当時の幼い彼の眼にはそれらは宝の山のように見えていたのだ。 流石に成長して子供なりに知識が増えてくると社外秘とかで見学する事はできなくなってしまったが、彼の好奇心旺盛な所はそんな経験から培われていたのかもしれない。 そんな性格が災いしてか、彼はその叔父の伝手で超格安の修理を終えたノートパソコンを手に家へと戻る途中で遭遇した奇妙な鏡を潜ってしまった。 全身に奔った痛みに意識を失い、次に眼を開けた時。 彼の目の前に広がった光景は、深い木々に囲まれた小さな広場だった。 訳がわからずに辺りを見回すと、そこに二人の女がいた。 やや厳しそうな顔の大人っぽい女が何事かを言い、ややおっとりした少女が首を振って何事かを言った。 そして少女はこちらを警戒するようにおそるおそる近づいてきた。 次第にはっきりとしてくる少女の造形に思わず彼は息を呑む。 (やべえ、可愛い) 正に森の妖精とも言うべき愛らしい少女だった。 透き通るほどに白い肌、陽光を孕んで揺れ輝く金糸の髪。 そこから覗く尖った耳なんてそれはもういわゆるお約束的な呼称で言う所の―― 「エルフ?」 口に出した途端、少女がびくっと震えた。 しかし彼としてはさほど驚かなかった。 何しろ、彼はついこの間秋葉原に行った時に、エルフの美少女を見た事があったからだ。 何やら新作のゲームの宣伝とかで、コスプレとは思えないほど堂に入ったファンタジックな衣装を纏っていて、付け耳とは思えないほど自然な造形の少女だった。 他にもそのエルフと同じようなファンタジックな衣装を着てにょーにょー鳴いてる美少女もいたし、明らかに堅気ではない気配を纏わせて剣を持つバンダナの男もいた。 あと何故かわからないが、輝明学園の制服を着た男子生徒がぎゃあぎゃあ騒ぎまくっていた。 どうやらその宣伝は無許可だったらしく、警官がやってきて大騒ぎになり慌てて逃げ出していったのをよく覚えている。 そんな事を思い出して、彼は今回もまたその手の類に遭遇したのかと思った。 カメラはどこだと辺りを見渡して、彼はようやく自分の置かれた境遇を把握した。 「……って、ここどこだ!?」 街中を歩いていたはずなのに、いつの間にか知らない場所にいた。 ――『知らない場所』どころか、『知らない世界』だと知ったのは、その後少ししての事だった。 ※ ※ ※ 宝物庫の襲撃に失敗してフーケが捕縛されてから、約三日。 彼女はお役所仕事でのんびりとやってきた王国衛士隊に引き渡され王都へ連行される事になった。 外の様子を見られぬよう窓が取り払われた荷車の中、フーケは壁に背を預ける形で座り込んで瞑目していた。 捕まって部屋に監禁されていた時もそうだが、現在でも特に取り乱すという事はない。 盗賊などという稼業をやりはじめた時点で、捕まった後の末路は既に把握していたからだ。 王都に辿り着いた後はチェルノボグの監獄に放り込まれ、形ばかりの裁判を受けた後わかりきった判決が下され執行されるだろう。 十中八九命はない。仮に生き延びたとしたら海側に島流しかサハラ辺りに放逐だろうか。 いずれにせよ彼女の人生は終了が決定していた。 未練はない、と言えば嘘になる。 が、どうしても生き延びなければならない、とは思っていなかった。 そこでフーケは思わず薄い笑みを浮かべてしまった。 ――まったく皮肉というしかない。 『一年前』まではそう思っていたのに、それが薄れた途端に転げ落ちるようにこんな事になってしまった。 彼女がトリステインに渡って王都を荒らし始めたのは半年ほど前になる。 本当なら一年前にそうする予定だったのだが、『予定外』の事が起きて半年遅れる羽目になったのだ。 もっとも、そのせいで……否、そのおかげで今の彼女の心境があるわけなのだが。 「……まあ、ひっそりと生きてく分には『あいつ』がいれば大丈夫だろ」 彼女はそんな事をつぶやいた。 その声に答える者は誰もいなかったが――代わりに、荷車が大きく揺れて動きを止めた。 王都に着くには早すぎる。 フーケは眉を僅かに潜めて眼を開いたが、窓もない荷車の中は薄暗闇に覆われている。 一応外から中を覗くための窓は添えつけられているが開く気配もない。 外から衛士達の喚き声が聞こえた。 続いて剣戟の音が響き渡る。 彼女は思わず身を起こしかけたが、小さく鼻で笑うと再び腰を下ろした。 ここは恐らく街道沿いなので魔物が出ることはまずありえない。 衛士隊を相手に襲撃を試みる馬鹿な盗賊もいないだろう。 襲撃を試みる盗賊はいないだろうが――襲撃をかける賊自体には心当たりがあった。 何しろ彼女は数多のトリスタニア貴族達からお宝を頂戴し続けてきたのだ。 その中には表沙汰に出来ない禁制の代物も少なからずあった。 裁判を待ちきれず……むしろ裁判で余計な事を言われないように口封じがしたい輩の仕業なのだろう。 剣戟は激しさを増し、破砕音や風切りの音まで聞こえ始めた。 恐らく魔法も使っているのだろう、相手はかなりの手錬のようだ。 しかしフーケは全く取り乱さなかった。 魔法を使おうにも杖は取り上げられているし、逃げられぬように手も足も縛られている。 仮に手足が自由であったとしても、王国の衛士隊に襲撃をかけてこれを退け、自分の前に辿り着けるような相手に心得程度の体術が通じるとは思えない。 要するに、残された時間が短くなっただけの話だ。 やがて剣戟がやみ、静寂が訪れた。 荷車の扉ががたがたと動き、そして乱暴に錠を破壊する音が聞こえた。 これで勝ったのが襲撃してきた賊の方だと確定した。 フーケは身を起こし、僅かに身を沈める。 半ば無駄な抵抗とわかっていたが、実際に差し迫ってくればやはり生きる本能というものが蠢くのだ。 扉が開かれ、光が差し込んだ。 入ってきたのはローブを纏い、包帯を巻いた左手に剣を握った男だった。 フードを深く被って顔を隠しているが、その所作は男のものだ。 体躯は少々頼りない感じでどちらかと言えば少年といった風情なのだが――開かれた扉の向こうには倒れた衛士達が転がっていた。 いくらか怪我をしているようだが、殺してはいないようだ。 そして他に人の姿は確認できない。おそらく襲撃をかけたのはこの少年ただ一人。 つまりこの少年は一人で衛士隊を相手取り、殺さずに倒しきるだけの力量があるという事だ。 刺客のくせに殺さないのは不可解だが、この際彼女にとってはどうでもいいことだった。 少年は僅かに顔を上げてフーケを認めると――大きく肩を揺らして盛大に溜息を吐き出した。 場にそぐわない、明らかに気の抜けきったその行動にフーケは眉を潜め――不意に小さく呻き声を漏らして驚愕に眼を見開いた。 「お、お前……っ!?」 「……」 少年はフーケを声を無視して歩み寄ると手にした剣で彼女を拘束する縄を断ち切った。 そして彼はやや乱暴に彼女の手を取ると、呆気にとられたままの彼女を引き摺るようにして荷車から連れ出した。 ※ ※ ※ 「ま……まて……!」 フーケは少年に手を引かれたままその場を後にした。 近場にあった林の中まで逃げ込んで現場から十分に離れた後、ようやくと言った感じで少年に向かって声を投げかけた。 「待てったら!」 乱暴に少年の手を振り払い足を止めると、少年も立ち止まって彼女を振り返った。 フーケは確認するように少年を上から下までまじまじと眺めやった後、怒りを露にして顔を歪めた。 「なんで……なんでお前がこんなところにいるんだ、サイト!!」 サイトと呼ばれた少年はフードを取り払い顔を露にすると、面倒くさそうに頭をかいてからぼやくように口を開く。 「なんで、って助けに来たんだろ?」 「違う! なんでお前がトリステインにいるんだ! テファはどうした!?」 詰め寄るフーケにサイトはばつが悪そうな表情を浮かべた後、溜息をつきながら答えた。 「……そのテファに頼まれたんだよ。あんたが何やってんのかどうしても知りたい……って」 「なっ……」 サイトの言葉にフーケは表情を固まらせ、絶句してしまった。 言葉を失った彼女をよそに、サイトはそのまま言葉を続けた。 「あんたが村を出たあと、テファに頼まれて金渡されて、そんで追っかけてきたの。酒場で給仕とかやってんの見た時は笑わせてもらったけどな」 「……っ!」 「まー相当笑えたけど、別に給仕でもいいじゃん。少ししてから変なジジイに連れてかれて先生とかもやってたらしいけど、それも別にいいよ」 サイトはそこで言葉を切って小さく溜息をついた。 そして彼は僅かに表情を翳らせて、凝固しているフーケを睨みつけた。 「けど、フーケって何なんだよ。盗賊とか何やってんだよ。おまけに捕まっちまってよ……あんたがいなくなったら、テファはどうなるんだよ!」 昼間の仕事に満足しきって夜間の行動を完全に見落としていたサイトにも落ち度はあっただろう。 そんな程度の仕事で『彼女』の生活費を賄えるはずがない、と気付かなかったのも落ち度と言えば落ち度だろう。 だが、それらの点に関して彼を責めるのはいささか酷というものだった。 何しろ彼はこんな素行調査じみた真似をやったのは初めてだったし、何より『ハルケギニア』の金銭感覚をまだあまり理解していないのだ。 何故なら彼は―― 「……っ、使い魔のお前に言われる筋合いなんてないんだよ!!」 ――『ハルケギニア』に来て一年程度しか過ごしていない異邦人だった。 ※ ※ ※ 約一年前。 『仕事』のためにトリステインに向かうにあたり、フーケ――本来の名をマチルダ・オブ・サウスゴータという――には一つ懸念すべき問題があった。 それは彼女が保護し面倒を見ているハーフエルフの少女、ティファニアの事である。 ハルケギニアにおいてエルフはある意味魔物たちよりも恐れられる存在であり、それに対する人間の風当たりは激しいなどというものではない。 ……具体的に言ってしまえばエルフと通じていたが故に投獄の対象となり、それを庇った家はまとめて粛清されてしまうほど。 つまりティファニアはそういう事情の少女であり、マチルダはそういう事情で名を喪ったのだった。 表沙汰にはできない彼女を置いていく事に関してはこれが初めてという訳ではないのだが、今回に限ってはかなり事情が違った。 当時のアルビオンにおいて、大規模な内乱が起きるという情報が裏の筋で出回っていたのである。 もしも内乱が起これば交通の要衝ともいえるシティ・オブ・サウスゴータはほぼ間違いなく戦火に見舞われることになる。 そうなればそこに程近い森にあるウェストウッド村も――隠れ住んでいるティファニアにも、その累が及びかねない。 そこでマチルダは彼女を守るため、楯を用意する事にした。 ティファニアに使い魔を召喚させたのである。 彼女個人はお世辞にも強いとは言いがたい、ひ弱と言っていい少女だったが、彼女はれっきとしたエルフの血を引く者である。 さぞ強力な幻獣が召喚されるだろうと思っていたが――果たして召喚されたのは幻獣ではなく『人間』だった。 これで現れたのが屈強な戦士だったり威厳を漂わせるメイジであったなら、いささか予想外ではあるがマチルダは構わず契約させただろう。 格式ばった貴族達ならともかく、今の彼女はそんな事にいちいち頓着しない。 だが現れたのはただの平民だった。戦闘はおろか喧嘩もあまりしたことのなさそうな、生っちょろい空気を漂わせた少年だった。 当然ながらマチルダは契約に反対したが、ティファニアは彼と契約すると言った。 召喚した主人がそう言うのなら、立会人でしかないマチルダが我を通すことなどできようはずもなかった。 ――こうしてヒラガ サイトという奇妙な名前の少年は、ティファニアの使い魔となった。 契約して後、サイトの素性を知ってマチルダは契約を止めなかったことを後悔した。 ティファニアを守るほどの力量を持ち合わせていないド素人という事は初見で見抜いていた。 しかし彼は力量どころかハルケギニアの常識すら持ち合わせていなかった。 挙句の果てに『ハルケギニアではない、違う世界から来た』などと正気とは思えないことをのたまった。 この点に関しては召喚された際に彼が持っていた奇妙な箱を見せられた事で百万歩ほど譲って信じることにしたが、目下の問題はサイトが何者かという事ではない。 ティファニアを守ることができるか、ただこの一点だ。 マチルダはトリステイン行きを延期して、サイトにハルケギニアの常識と戦い方を半年間がっちり叩き込んだ。 そしてどうにか生きていくに十分な知識と力量をサイトが手に入れると、彼にティファニアを任せて彼女はトリステインへと赴いたのである。 ※ ※ ※ 「……あー、そうかよ」 マチルダの声にサイトは低く唸り、頬をひくつかせた。 そして彼は自分を睨みつけてくるマチルダを睨み返し、素早くその腕を取って最初と同じように歩き出した。 「な、何を……!?」 「決まってんだろ、ウエストウッド村に帰るんだよ」 振りほどこうとするマチルダをしかし彼は決して離そうとはせず引き摺るようにずんずんと進んでいく。 彼女を振り返ろうともせず、サイトは言葉を続けた。 「俺に言われる筋合いねーんなら、テファに言ってもらう。帰って報告しなきゃなんねえしな。俺、テファの使い魔だから」 「……!」 そこで初めて、マチルダの表情が激しく変わった。 怒りに紅潮していた顔が一瞬で蒼白になり、体に僅かな震えが走った。 柊に破れ衛兵達に囚われた後でも、荷車に乗せられ王都に連行される時でも見せたことのない、怯えた表情だった。 「は、離せ!」 彼女は今までにも増してめちゃくちゃに暴れ始めた。 その光景はもはやだだをこねる子供とそれを無視して手を引く保護者のようにも見えた。 「……言っとくけど、」 サイトは空いた手で剣を握り締めてから肩越しにマチルダを睨んだ。 握った左手――巻かれた包帯の奥から、淡い光が零れた。 「杖を持ってない今のアンタにはぜってぇ負けねえし、絶対逃がさねえからな」 「……っ」 マチルダは歯を噛んでその事実を受け止めるしかなかった。 何しろそれだけの力量に鍛え上げたのは彼女自身なのだ。 加えて言えばそれは――今サイトの左手で光っている、使い魔のルーンのお陰でもある。 マチルダはしばし屈辱に燃える瞳でサイトを睨み続け……やがて大きく肩を落とした。 彼女が諦めたことを悟ったのか、サイトも彼女から手を離して再び歩き出す。 そして二人はしばらく無言で林の中を歩き続けた。 林を抜けても二人は何も言葉をかけず、草原を進んでいく。 ちなみにサイトは勿論マチルダも街道を外れたこの辺りの地理はいまいち詳しくないので、どこに向かっているのかわからない。 もっとも街道に近づくと彼女に逃げられた衛士隊と鉢合わせる可能性があるのでしばらくはこのままだろうが。 マチルダは先を歩くサイトの背中をずっと眺めながら後を追い……ふと思い立ってサイトに歩み寄ると、彼の左手を取った。 「な、なんだよ」 派手に身体を揺らして振り返るサイトをよそに、マチルダは彼の左手にまかれている包帯を剥ぐとそこに刻まれているルーンをまじまじと観察した。 「……やっぱり」 「なんだよ。ルーンがどうかしたのか?」 「せっかく魔法学院に行ったんでね。ついでにあんたのルーンの事も調べてみたんだよ」 マチルダの言葉に興味を引かれたのか、サイトは立ち止まって彼女の顔を覗き込んだ。 「も、もしかして俺のために?」 「そんな訳あるか。テファの使い魔に意味のわからないルーンが刻まれてるのが気持ち悪かっただけさ」 「……デスヨネー」 遠い眼をしてサイトは呟いた。 サイトは自分がマチルダから嫌われていることは半年間の共同生活の際に身に沁みていた。 その最たるものが日課のごとく行われていた戦闘訓練である。 剣の扱い方など知るはずもない彼女にサイトが教わったのはただ一つ、ひたすらの実戦だけだった。 トライアングルメイジ謹製のゴーレムによる百人組み手。 しかもぶっ倒れても水魔法で治癒されて無理矢理続行させられるデスマーチだ。 正直このルーンがなければ百回ぐらいは死んでいたかもしれない。 「で。このルーンが何だって?」 「『ガンダールヴ』。かつて始祖ブリミルが従えたっていう伝説の使い魔のルーンだってさ」 「……伝説ぅ?」 サイトは胡散臭げに漏らした。 確かに、このルーンの効果は絶大なものだ。 初めての戦闘訓練の際、武器を使ったことがないと打ち明けたサイトに呆れ果てた表情を見せてマチルダが投げ渡した"錬金"製の剣。 それを握った時左手に刻まれたルーンが光り輝き、身体が異様に軽くなり使った事もない剣を手足のように操れたのだ。 このルーンが凄いというのは認めるが、やはり『伝説』とか言われるとどうにもむずがゆい。 それは言った当人のマチルダも同様だったようで、彼女は小馬鹿にするように鼻を鳴らした。 「まったく笑える話じゃないか。あんたみたいなド素人が伝説――」 不意にマチルダの言葉が途切れ、表情も凍りついた。 サイトは訝しげに彼女を覗き込んだが、マチルダは取り憑かれたように左手のルーンを凝視している。 「……どうしたんだ?」 「……」 サイトの声も彼女の耳には入ってこなかった。 ただじっとガンダールヴのルーンを見つめる。 ――実物を目の前にして、ようやく疑念が確信に変わった。 このルーンと似たルーンを、つい最近眼にしたのだ。 そう、このルーンは細かい部分こそ違うものの、志宝エリスの胸に刻まれたルーンに酷似していた。 ガンダールヴを調べた時に見た資料に、あのルーンもあったのだろうか。 あの時は対象がガンダールヴだけだったので他のものは覚えていないし、エリスのルーンをいちいち調べるほどの義理もなかったのでいまいち覚えていない。 だが、こうして実物を目の当たりにしてみれば確かにあのルーンはこの『ガンダールヴ』に似ていた。 「――」 マチルダはあの夜に感じた畏怖を思い出して身を震わせた。 あの時の彼女と彼女の纏う光は確かに伝説を謳うに相応しい威容だった。 ……だとしたら、彼女の持つルーンに酷似するこのガンダールヴも、それが刻まれているこの少年も、同類なのか。 そしてもう一つ。 彼女に応ずるように光を纏ったその主も、同類なのだろうか。 ティファニアは系統魔法では類を見ない奇妙な魔法を使うことができる。 マチルダは先住魔法の一種かと思っていた(ティファニア本人はわからないらしい)が、アレも『伝説』の片鱗なのかもしれない―― 「どうしたんだよ?」 黙り込んだマチルダを窺うように覗き込んできたサイトの声で、マチルダは我に返った。 彼としてはそうでもなかったのだろうが、彼女にとっては唐突にかけられた声に驚いて身を離した。 眉を潜めて首を傾げるサイトを見て、マチルダは大きく深呼吸して粟立った気持ちを落ち着かせた。 「……あんたのソレと似たようなルーンを持ってる子を思い出しただけだよ」 「……は?」 誤魔化すために吐き出した言葉だったが、サイトはそれを聞いて更に首を捻った。 「『子』? 子、ってもしかして人間なのか? 使い魔って動物とか幻獣とかじゃなかったの?」 「学院の生徒が人間を二人も召喚してね。そいつ等もあんたみたく違う世界から来たって言ってたっけ」 コルベールのような学者肌でもないマチルダがエリス達の発言に対してかろうじてまともに対応できたのも、偏にサイトという前例があったためだ。 まさか人間に加えて『異世界から来た』などというところまで前例通りだとは思わなかったが。 「はあァッ!?」 サイトは素っ頓狂な声を上げてマチルダに詰め寄った。 驚いて身をひきかけた彼女の肩を掴み、サイトは一気にまくし立てた。 「嘘、マジ!? 他にも地球から来た奴がいんの!? しかも二人ってナニ!! 今もまだあの学校にいるの!?」 「お、落ち着けって!」 額が接触しそうなほどに接近してきたサイトをマチルダは乱暴に振り払った。 それでもなお食い下がろうとする彼に、彼女は嘆息を漏らしつつ言った。 「アンタの同郷かどうかなんて知らないよ。なんかファー・ジ・アースって世界から来たらしいけど」 するとサイトの動きがぴたりと止まった。 彼女の言葉を頭の中で反芻するかのようにしばし沈黙を保ち、やがてその場にへなへなと崩れ落ちて頭を抱えた。 「なんだよそれ。ファージなんとかとか知らねえよ。俺が来たのは『地球』だっつうの……!」 「私に言われたって知るもんか。仮にその地球ってトコから来てたとしても、今更戻ることなんてできないだろ。アンタだけで入れるはずもないし」 「……ぐあー、なんだよぬか喜びさせやがってぇ……!」 サイトはぼやきながら頭をがしがしと掻き毟った。 そして力なく立ち上がると空を見上げ、大きな溜息をついてから再びがっくりと肩を落とす。 「そりゃハルケギニアなんつう異世界があるんだから他にも異世界があったってもう驚きゃしないんだけどさぁ……はあ、まじかよ……」 ぶつぶつと愚痴を零しながらサイトは再び歩き出した。 しょんぼりと遠ざかっていく彼の背中をマチルダは追わず、じっと見つめていた。 何度か口を開きかけては思いとどまり、そして小さく頭を左右に振る。 そして彼女は呟くように、言った。 「サイト」 「あー?」 「……あんた、良かったのかい?」 「良かったって何が?」 振り返りもせずに応えるサイトの背中を見ながら彼女はほんの僅かに沈黙を保ち、そして意を決したように言葉を続けた。 「……。テファの使い魔になったこと……」 「……、」 そこでサイトは足を止め、マチルダを振り返った。 彼はいぶかしむように見つめると彼女は顔を逸らし、表情を歪めて舌打ちした。 エリスと彼女のルーンの事を思い出したついでに、ルーンの確認をした際に交わした会話も思い出してしまったのだ。 彼女は自分の意思でルイズと使い魔の契約を交わした。 だがマチルダがティファニアにサイトと契約をさせたとき、"ちょっとした事情"で彼は気を失っていたのだ。 その時はティファニアを守る事が第一だったし使い魔の事情なんぞ知ったことではなかったのだが、エリスを見て何となく気になってしまったのだ。 「嫌だっつったって契約は解除できないんだろ? 今更じゃん」 サイトはマチルダをまじまじと見つめた後、軽く頭をかきながら答えた。 その声に僅かにマチルダの表情が翳ったのを見て取ると、サイトは眉を顰めてから口を尖らせる。 「……俺、地球にいた時はなんとなく学校行って、適当に友達と遊んで、なあなあで生きてきて……あんたの事をテファに頼まれた時みてえに、あんな必死に頼まれた事もなくってさ」 言ってからその生活の事を思い出したのか、サイトは遠くを見るように僅かに眼を細めた。 そして彼は小さく頭を振って郷愁を追い払うと、小さく息を吐いて苦笑を浮かべる。 「だからまあ、なんつうか。誰かに必要にされて、誰かの役に立つってのも悪かねえな、みたいな……」 「……そう」 エリスと似たような事を言う少年に、マチルダはわずかに顔を俯かせて呟いた。 少しの沈黙の後、サイトははっとしてマチルダを見やり慌てたような声で言った。 「……あ、でもそれと一生ここで暮らすってのは別だかんな! 地球に帰る方法が見つかるまでの間だぞ!?」 「はいはい。もっともその日が来るのはいつになるかわかんないけどね。なにしろ――」 魔法学院の図書室を調べて見ても――生徒の閲覧が禁じられているフェニアのライブラリィも含めて、だ――異世界に渡る方法など全く見つからなかったのだ。 流石に隅々まで調べ尽くしたという訳ではないが、それでもそんな荒唐無稽なモノが早々見つかるはずもないだろう。 同じく元の世界に戻ろうとしている柊の前途も多難と言ったところだ。 「なにしろ、何?」 「何でもないよ。っていうか、そこまで格好つけるんならこんなトコにいないでテファの傍にいろっていうんだよ」 「何言ってんだ。あんたが死んじまったら、あいつ悲しむどころの話じゃなくなっちまうだろ。だからこれもちゃんとテファを護るってことだ」 「……だったら、私の事も黙っといてくれ。こんな事知ったら、テファが悲しむ」 「ヤだね。俺はあいつの使い魔だから、テファを泣かすような真似する奴を放っておくわけにはいかねえ」 行こうぜ、とサイトは再び歩き出した。 振り返る気配はない。どころか、自分の動きに警戒する気配すらない。 もっとも逃げ出したところで"今の"サイトからは逃げられはしないだろうし、逃げおおせた所で彼に自分の仕事を知られた以上事態が好転することなどない。 ウエストウッド村に戻ってティファニアに再会し事情を打ち明けたとき、彼女が一体どんな表情を浮かべてどんな言葉を紡ぐのか、それを考えると震えが止まらなかった。 そこでようやく彼女は盗賊稼業を始めた事に大きな後悔を覚え、まるで絞首台に向かう死刑囚のような心境で先を行くサイトの後を追うのだった。 前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い
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前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ ある夜、トリステイン王国とその近郊で4つの事件が起きた。 平民から搾取をするメイジ、あるいはドラゴンなどの幻獣が突如気を失ったという事件である。 だが、この4つの事件を結びつける者は誰もいなかった。 それも当然で4つの事件が起こった場所はあまりにも離れていたし被害者にも共通点がなく、その上誰にも知られることなく終わったものもあったからである。 これは、その4つの事件の中の1つのあらましである。 深夜のヴァリエール公爵の屋敷。 そこに屋敷の庭に作られた花の迷路を駆ける土くれのフーケの姿があった。 なぜ彼女がヴァリエール領にいるか。 それは盗賊としての仕事のためである。 トリステイン魔法学院での盗みに訳もわからぬうちに失敗したフーケは学院に帰るに帰れなくなり、かねてから次の目標と定めていたヴァリエール公爵所有の宝物を頂戴すべくこの地を訪れた。 では、なぜ今その土くれのフーケがヴァリエール公爵の屋敷に作られた花の迷路を髪を振り乱し、服を汗で体に貼り付けながら息を切らせて走っているのか。 それは彼女が盗みに失敗したからである。 学院の時とは違い夜陰に乗じて邸宅に侵入した──ケチがついた学院の時と同じ方法を使う気にはなれなかった──フーケはあらかじめ調査しておいた通りに宝物のある部屋に足音を忍ばせて急いだ。 目当ての部屋まであと少し。 そこで少女が一人、フーケの前に立ちはだかった。 「お前、泥棒か?」 赤毛の、まだ子供と言っていい歳のメイドの少女が気の強そうなつり目を向け、フーケの前に立っていた。 立っていた、と言う言い方は正確ではないかもしれない。 立ちはだかっていた、と言う言い方が適切だろう。 「おとなしく捕まるんなら何もしねえよ。そうでないんなら、ちょっと痛い目にあってもらわねえとな」 「はっ」 フーケは鼻で笑う。 たかが子供に、たかがメイドになにができるのか。 「それは私の台詞だよ。お嬢ちゃん。平民がメイジに何ができるって言うんだい?」 そう、少女は杖を持っていない。マントも着ていない。 フーケのような貴族崩れですらない。たかが平民なのだ。 たった一人の平民の子供がメイジのフーケに何ができるわけがない。 「おとなしくしてるなら何もしないであげるよ。でも、そうでないんなら痛い目にあってもらわないとねえ」 フーケは少女の言葉を真似て嘲り、そして杖を構える。 少女との距離は離れている。 人間の脚力ではどうやっても一気に飛び込める物ではない。 つまり剣や素手の間合いではないのだ。 それなら魔法で少女をどうとでもできる。殺すも生かすも思いのままだ。 故に、これで大抵の平民は黙ってしまう。 「なら、しかたねえな」 だが少女は怯みもしなければ怯えもしなかった。 つり目を離さずに、やや半身に構える。 「少し痛い目にあってもらうぜ!」 地面を蹴る少女は低くフーケに跳ぶ。 「は、バカだねえ」 フーケは落ち着いて杖を振り、ルーンを唱える。少女は確かに速いが、杖の一振りで魔法を使えるメイジ相手には不十分だ。 木の床は練金で瞬時に泥沼に変わり、天井は土となる。 ──終わりだよ 素手の少女がフーケに手を出すには、泥となった床を踏まなければならない。 そして泥を踏めば足を取られ、土となった天井が少女を生き埋めにする。 勢いのついた少女は今更止まれないはずだ。 フーケは三日月のように唇をゆがめ、嘲笑を少女にくれてやる。 「たあああああああああああああああああああっ」 泥に埋まる少女が叫び声をあげる。 それは、やむことなくフーケに迫り、彼女の嘲笑をわずかなものとした後に驚愕へと変えた。 少女は床に足をつきはしなかったのだ。 「なっ」 空を飛び、いつの間にか握っていた槌のような杖でフーケに横一閃。 間一髪、床に転げたフーケの頭上を槌が通過する。 少女の細い腕でふるわれたとは思えない威力を持つ槌が屋敷の壁を粉々に粉砕した。 「冗談じゃないよこんなの!」 フーケはその穴から転がり出る。 壁が砕け散ったときに出た音が屋敷の隅々まで響いている。 この盗みは失敗だ。 フーケは、あらかじめ予定していた経路に向かい走った。 そして今、フーケは屋敷の庭に作られた花の迷路を走っていた。 庭木で作られた迷路の壁は高く、また密集しているためフーケを見つけるのは非常に困難になっている。 しかもフーケは脱出のための経路をあらかじめ調べている上にいざとなったら土の魔法で庭木の壁に穴を開け、またふさぐこともできるのだ。 だれも追いつけるはずがない。ここまで来ればもう脱出したも同然だった。 「まちやがれ!」 はっきりと声が聞こえた。 ──見つかった? 振り返っても誰もいない。 声の大きさから考えて遠くにいるわけではない。ならどこに? 声が聞こえた方向をもう一度思い出す。 声は…… ──上? 追っ手は上にいた。 先ほどの壁を粉砕したメイドの少女が槌のような杖を持ち、そしてなぜか赤い服──それはどこか戦装束を思い起こさせた。両脇に不気味な怪物の顔がつけられた帽子など、他の何に使うというのか──を着て空を飛び、フーケめがけて急降下してくる。 「さっきは驚いたけど馬鹿なことをしてるもんだよ」 フーケはルーンを唱え、魔力を通した足で地面を蹴る。 学院の時と同じだ。地面はあっという間に盛り上がり、巨大な人型を作った。 「ここまでフライを使って精神力を使い果たして何しようってんだよ」 土のかたまりはゴーレムとなり赤い少女を握りつぶさんと手を伸ばす。 赤い少女は止まらない。さらに速度を上げ、そして一言叫んだ。 「アイゼン!」 火薬の爆ぜる音、そして金属がぶつかり合う音がした。 少女は槌を振り上げ、ゴーレムに振り下ろす。 人間が振り回せるような槌で30メイルものゴーレムがどうにかなる物ではない。 だが少女の槌はゴーレムの腕を粉砕し、二撃目でゴーレムの全てを吹き飛ばした。 その後ろにいたフーケもろとも。 「きゃああああああああああああああ」 吹き飛ばされたフーケは迷路の壁を作る庭木に抱き留められた。 枝が頬や腕にひっかき傷を作ったが、それは優しい方だったかもしれない。 少なくとも目の前にいる赤い少女よりは。 「カトレアに知れたら事だからな。人間相手にはあんまりつかわねえんだが泥棒なら別だ」 少女は手を掲げる。 睨むフーケの目の前で不思議なことが起こった。 フーケの胸元から光る玉が浮かび上がっていくのだ。 何が起こっているのかはわからない。だが、その原因が赤い少女にあることは確実だ。 「な……何をする気……」 「蒐集」 フーケの腕から力が抜ける。 視界は闇に閉ざされ、意識は沈んでいった。 ルイズが勲章を賜ってから数日後のことである。 その日はルイズにとっては久しぶりの授業だった。 あの後ルイズは、水のメイジの秘薬を使っても回復がかんばしくなく、寝込んでいた。 ルイズはその間、ずっとおかんむりだった。 特にフリッグの舞踏会当日は 「私も出るー」 と、ふらつく体を引きずって無理矢理起き出してユーノを困らせたほどだった。 これはこの数日でユーノが2番目に困ったことだった。 ちなみに1番困ったのはルイズの毎日の着替えである。 体が疲弊して、ろくに体が動かないルイズの着替えをユーノが手伝ったわけで……。 いやまあ、ほとんどはシエスタが手伝ってはいたんだけど。 何はともあれ久しぶりの教室は前に比べて少し騒がしく、女生徒たちが固まってお喋りをしている。 ルイズは、その集団をちょっと見ただけで席に着いたのだが、向こうからルイズに近寄ってきた。 「ねえねえ。ルイズ、ちょっと教えて欲しいんだけど」 どうやら、この集団のリーダーはモンモランシーらしい。 「何を?」 「そりゃあ、今評判の女騎士様の事よ」 「女騎士?なんでそんなの私に聞くのよ」 「ああ、そうか。ルイズはずっと寝てたから知らないのよね。わかったわ。教えてあげる」 そしてモンモランシーは蕩々と語り始めた。 「ちょっと前にね。土くれのフーケが捕まったのよ。どこで捕まったと思う?なんと、ヴァリエール領。そう、あなたの故郷のヴァリエール領よ。土くれのフーケはあなたのとこのお屋敷に泥棒に入ったんだけど、見つかって逃げたんですって。それを追跡して、死闘の果てに捕まえたのがヴァリエール公爵の次女、カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ様とその騎士団ってわけよ」 「……はぁ?」 モンモランシーの説明には最後の部分にとても聞き捨てならないところがあった。 「ちょっと待って。誰と誰の騎士団?」 「だから、カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ様とその騎士団よ。黄金の杖を持って、白銀の鎧に身を包み、桃色がかったブロンドをなびかせ白馬に乗った女騎士。カトレア様。あぁ、きっと、とても素敵な方なんでしょうね」 「え?あ?その……どこのカトレアでどこのヴァリエール領よ」 「あなたのところに決まってるじゃない。だから、あなたに聞きに来たのよ。カトレア様がどんな方か」 「いやいやいやいや。それ、絶対ないから」 いや、もうあるわけがない。 ルイズはまず自分の姉であるところのカトレアが白銀の鎧を着たところを想像する。 間違いなくつぶれる。 次にカトレアが黄金の杖を持って土くれのフーケと闘うところを想像する。 間違いなく倒れる。 ここでちょっと考え方を変える。 土くれのフーケが得意な魔法はゴーレムだ。 カトレアも優秀な土の系統のメイジで、ゴーレムを作る魔法もかなり上手い。 なら、これでゴーレム大決戦をやったら……どう考えても似合わない。 このことからルイズは一つ結論を出した。 ──何が起こったかはわからないけど尾ひれがつきまくってるみたいね。 「絵姿も出ているのよ。見る?」 「見せて」 モンモランシーが丁寧に折りたたまれた絵姿を取り出す。 それを見たとき、ルイズの目は点になった。 「これ、姉様じゃないわよ」 「は?」 「じゃあ、誰のよ!」 「知らないわよ。でも、とにかく、これは姉様じゃないわ。だまされたんじゃないの?」 「きーーーーーーーっ」 激しく悔しがるモンモランシーとこの前できたばかりのカトレアファンクラブ一同。 だが、実のところルイズは嘘をついていた。 その絵姿には見覚えがあった。 おそらく何十年も前に書かれた物を模写して、少しだけ加筆修正した物だろう。 絵姿の人物がヴァリエール領にいるのは間違いない。 そして、その人物ならばフーケを地の果てまで追いかけて捕まえるくらいできるであろう事もわかっていた。 その人物は烈風の2つ名を持つあの人なのだから。 その人が捕まえたのならば、カトレア姉様が捕まえたというのよりはずっと信憑性がある。 だが……しかし…… ──あの人と死闘を演じるなんて……フーケって、どういうメイジなのよ。 話半分に聞いても無茶を通り越して、フーケの事がとても心配になる。 ルイズは悲鳴を上げるファンクラブを尻目に、しばらく頭を抱えていた。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
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もくじを見る 概要 使用ポケモン 関連項目 コメントフォーム 概要 使用ポケモン No. ポケモン レベルアップ わざマシン 関連項目 わざ あ行 アーマーキャノン アームハンマー アイアンテール アイアンヘッド アイアンローラー アイススピナー アイスハンマー アイスボール あおいほのお アクアカッター アクアジェット アクアステップ アクアテール アクアブレイク アクアリング あくうせつだん アクセルブレイク アクセルロック あくのはどう あくび あくまのキッス あくむ アクロバット あさのひざし アシストギア アシストパワー アシッドボム アストラルビット あてみなげ あなをほる あばれる アフロブレイク あまいかおり あまえる あまごい あやしいかぜ あやしいひかり アロマセラピー アロマミスト あわ アンカーショット アンコール あんこくきょうだ いあいぎり いえき イカサマ いかり いかりのこな いかりのまえば いじげんホール いじげんラッシュ いたみわけ いちゃもん いっちょうあがり いてつくしせん いとをはく イナズマドライブ いにしえのうた いのちがけ いのちのしずく いばる いびき いやしのすず いやしのねがい いやしのはどう いやなおと いわおとし いわくだき いわなだれ インファイト ウェーブタックル ウェザーボール うずしお うそなき うたう うたかたのアリア うちおとす うつしえ ウッドハンマー ウッドホーン うっぷんばらし うらみ うらみつらみ エアカッター エアスラッシュ エアロブラスト エコーボイス えだづき エナジーボール エラがみ エレキネット エレキフィールド エレキボール エレクトロビーム えんまく おいうち おいかぜ おいわい おうふくビンタ オウムがえし オーバードライブ オーバーヒート オーラウイング オーラぐるま オーロラビーム オーロラベール おかたづけ おきみやげ オクタンほう おさきにどうぞ おしおき おしゃべり おたけび おだてる おちゃかい おどろかす おにび おはかまいり おまじない おんがえし おんねん か行 ガードシェア ガードスワップ かいでんぱ かいふくしれい かいふくふうじ かいりき カウンター かえんぐるま かえんだん かえんのまもり かえんほうしゃ かえんボール かかとおとし かぎわける 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しおづけ しおふき しおみず シグナルビーム じこあんじ じごくぐるま じごくづき じこさいせい シザークロス じしん しぜんのいかり しぜんのちから しぜんのめぐみ したでなめる じたばた じだんだ しっとのほのお しっぺがえし しっぽきり しっぽをふる じならし しねんのずつき じばく じばそうさ しびれごな しぼりとる しめつける ジャイロボール シャカシャカほう シャドークロー シャドースチール シャドーダイブ シャドーパンチ シャドーボール シャドーボーン シャドーレイ じゃどくのくさり じゃれつく ジャングルヒール じゅうでん 10まんばりき 10まんボルト じゅうりょく じょうか しょうりのまい しろいきり じわれ しんくうは シンクロノイズ しんそく じんつうりき しんぴのちから しんぴのつるぎ しんぴのまもり シンプルビーム じんらい スイープビンタ すいとる すいりゅうれんだ スカイアッパー スキルスワップ スケイルショット スケイルノイズ スケッチ スターアサルト スチームバースト ずつき すてゼリフ すてみタックル ステルスロック ストーンエッジ すなあつめ すなあらし すなかけ すなじごく スパーク スピードスター スピードスワップ スプーンまげ スポットライト スマートホーン スモッグ すりかえ スレッドトラップ せいちょう せいなるつるぎ せいなるほのお ぜったいれいど そうでん ソウルクラッシュ ソウルビート ソーラービーム ソーラーブレード ソニックブーム そらをとぶ た行 ダークホール タールショット たいあたり だいちのちから だいちのはどう だいばくはつ ダイビング だいふんげき ダイマックスほう だいもんじ ダイヤストーム たがやす タキオンカッター たきのぼり だくりゅう たくわえる たこがため ダストシュート たたきつける たたみがえし たたりめ たつまき たてこもる タネばくだん タネマシンガン ダブルアタック ダブルウイング ダブルチョップ ダブルニードル ダブルパンツァー タマゴうみ タマゴばくだん だましうち たまなげ ダメおし だんがいのつるぎ ちいさくなる ちからをすいとる ちきゅうなげ チャージビーム チャームボイス ちょうおんぱ ちょうのまい ちょうはつ ついばむ ツインビーム つきのひかり つけあがる 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【!】釘宮病にご用心【!】 くぎゅううううううううううう!ここは釘宮病原菌が蔓延していて危険だよっ!かっ…感染しても知らないんだからねっ!? \(^o^)/ もうやだこの国 \(^o^)/ この記事は、「もうやだこの国」的な記事に認定されました。この前書きが張られた際、特別に管理、保護される対象となります。 説明するより見たほうが早いよ ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ルイズルイズルイズぅううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん んはぁっ!ルイズ・フランソワーズたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!! 間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅきゅい!! 小説11巻のルイズたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!! アニメ2期決まって良かったねルイズたん!あぁあああああ!かわいい!ルイズたん!かわいい!あっああぁああ! コミック2巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!! ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら… ル イ ズ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ハルケギニアぁああああ!! この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のルイズちゃんが僕を見てる? 表紙絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!ルイズちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!! アニメのルイズちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ! いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはルイズちゃんがいる!!やったよケティ!!ひとりでできるもん!!! あ、コミックのルイズちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!! あっあんああっああんあアン様ぁあ!!セ、セイバー!!シャナぁああああああ!!!ヴィルヘルミナぁあああ!! ううっうぅうう!!俺の想いよルイズへ届け!!ハルケギニア(注)のルイズへ届け! 注:「ハルゲニア」の表記の場合もある。ただし、これは誤植とされる。 また、「ハルンケア」と誤植する場合もごくたまにあるらしい。 「パイオニア」もあったけど…。 超どうでもいい付けたし 釘宮病を末期状態にするとこうなる。 最後のほうでシャナぁああああああ!!!と叫ぶのはわかる。何故ヴィルヘルミナ・カルメルが出てくるのであろうか (ポーカーフェイスメイドさんと釘宮病はほぼ関連性が無い) この辞書内でこの記事にリンクさせる際、「ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!」と、「あ」の数をちゃんと合わせないと、その記事が存在しないことになってしまうので気をつけよう この文章を見ないで一字一句言える様になれば、君も立派な釘宮病患者である。おめでとう。(ねとらじでやると盛り上がるかもしれない) 関連リンク 釘宮病 ルイズ ゼロの使い魔 シャナ ヴィルヘルミナ・カルメル 灼眼のシャナ もうやだこの国
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リミットオーバー・ドライブ(OCG) 速攻魔法 「リミットオーバー・ドライブ」は1ターンに1枚しか発動できない。 (1):自分フィールドのSモンスターのチューナー1体と チューナー以外のSモンスター1体をエクストラデッキに戻して発動できる。 そのモンスター2体のレベルの合計と同じレベルのSモンスター1体を、 召喚条件を無視してエクストラデッキから特殊召喚する。 シンクロモンスター補助 チューナー補助 バウンス 魔法